製造現場において、生産管理システムは生産プロセスの最適化や効率化を通じて、競争力を高めるために欠かせない存在となっています。特に近年は、PDM(製品情報管理システム)との連携を通じて、設計段階から生産に至るまでの一貫した情報の流れを確立することが、製造業の効率化と品質向上のポイントとなりつつあります。本コラムでは、生産管理システムの基本的な役割やメリット、PDMとの連携による具体的な効果について解説します。
目次
生産管理システムとは、受注から生産・出荷までの企業の生産プロセスを一元的に管理、最適化するためのツールです。特に、生産の効率化と品質向上を追求する製造業においては重要な役割を果たしています。
生産管理システムは、企業が取り扱う製品や生産プロセスに合わせた形で構築されます。そのため一概にはいえませんが、一般的には以下のプロセスと機能で構成されています。
製造業の企業における生産管理システムは、企業の規模や製造する製品のプロセスに応じて適したシステムを選択する必要があります。また、各企業独自の生産ノウハウを反映させるため、カスタマイズを実施する場合があり、拡張性の高い製品を選択する企業が多くみられます。昨今のビジネススピードに合わせて、Saas型のシステムを選択し、スピード重視の運用を選択される企業も増えております。なかには、拡張性の高い製品を選び、特定の要件に合わせて機能を追加する企業がある一方で、基幹業務を統合的に管理できるERPとして導入している企業もあります。
最近では、QCD(品質・コスト・納期)の向上を狙った、生産管理システムとPDM (製品情報管理システム・Product Data Management) との連携も注目されています。PDMとの連携により、設計段階から生産に至るまでのデータを一貫して分析・共有できるため、製品開発から製造までの効率化が期待されます。
生産管理システムは、ものづくり企業が競争力を維持・向上させるために欠かせないツールとして、製造業にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められるなか、今後もその重要性は増していくと予想されます。
生産管理システムは製造工程に関連するデータの管理や進捗管理ができます。以下では、代表的な機能を5つご紹介します。
生産現場では、「いつ」「どのような製品を」「どれくらいの数を」「いつまでに」生産をするのかという計画を立案します。生産管理システムの生産計画機能では、1か月~1年間単位で生産計画の基本軸となる「大日程計画」を作成し、生産量に対して必要となる所要量を算出し、リソースや部材のシミュレーションを行います。
生産手配機能では、所要量シミュレーション結果に基づき、生産に必要な材料や部品の購入、生産ラインへの供給を一元管理し、進捗状況の確認ができます。この機能により、必要な材料が適切なタイミングで生産ラインに供給できるため、稼働率の低下を防ぐことができるでしょう。
原価管理機能は、各種実績データを元に、製品の製造コストを積算し、生産にかかる各種コストを詳細に計算・分析できます。原材料や労働、設備などのコストを明確にし、製品の適正な価格設定や利益率向上に役立てることが可能です。実際の原価と標準の原価の比較や、平均原価をリアルタイムで確認できる機能もあります。
適切に活用することで企業は競争力を強化し、より効率的な経営を実現できるようになるでしょう。
在庫管理機能は、製造日や在庫量といった在庫状況をリアルタイムで把握できます。過剰在庫のリスクを最小限に抑えつつ、供給不足による生産遅延のリスクを回避でき、適切な在庫量を維持することで、キャッシュフローの最適化やムダなスペース使用の削減にも貢献できるでしょう。さらに入庫やピッキングの業務管理も可能です。
購買管理機能は、生産に必要な材料や部品の調達と供給を効果的に管理します。仕入れ先、納期、数量、価格を適切に管理し、生産プロセス全体の円滑な運用を支援します。
進捗管理機能は、各プロセスにおける生産の進行状況をリアルタイムに監視・管理できます。この機能を使用することで、生産の遅延や不良率が上昇するなど問題点を迅速に特定し、対策を講じることができるでしょう。進捗管理は、品質や納期遵守に重要な役割を果たします。
現代の製造業において、生産管理システムは必須な存在といっても過言ではありません。効率的な生産プロセスの確立や企業の収益性向上など、さまざまなメリットがあります。その他、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。以下で、生産管理システム導入時に期待されるメリットを5つご紹介します。
生産管理システムは、各生産プロセスにおけるデータを一元管理し、状況に応じて最適化できます。これまで生じていた、ムダな工程やボトルネックを発見し大幅に削減することが可能となるため、製品の生産を効率的に進められるでしょう。
特に、多品種・少量生産を行う作業場にとっては、メリットの大きい機能といえます。
システムの導入により、品質管理のプロセスが標準化されるメリットもあります。製造される製品の品質に一貫性を持たせて不良率を下げることができれば、顧客からの信頼を深めることができるでしょう。クレームの減少やリピート率の向上など、品質の一貫性を高めることはビジネスの面でも重要な要素です。
在庫管理は、資金繰りやスペース利用に直結する要素です。生産管理システムを利用することで、必要な材料や製品の在庫量をリアルタイムで把握し、過不足なく最適な量を確保できるようになります。最適な在庫管理により、資金を効率的に運用したり、ムダなスペースの利用を削減したりすることができるのです。
従来、人手で行われてきた原価計算などの作業は、より細かく指標を分析できるため、データの精度が向上するでしょう。
また、従来は現場の社員しか知らなかった生産に関するデータを、経営者や責任者もリアルタイムで取得・分析することが可能になります。部門を跨いでデータの共有ができれば、市場の変動や需要の変動に対して迅速な意思決定をしやすくなるため、事業の柔軟性や持続可能性を高める要因となるでしょう。
生産管理システムは、従来エクセルや紙で管理していた集計や指標把握を自動化できるため、集計速度が上がるだけでなく人的コストの削減にも寄与します。
また、人的ミスによる原材料のムダな購入や機械のムダな稼働を防ぐことができるため、コスト増加の要因が多岐にわたる場合でも改善されるでしょう。
電脳工場は生産計画の立案から受注、出荷、手配計画など、ものづくり企業に役立つ情報を一元管理し、工場経営に役立てることが可能です。また、生産管理システムでありながら、請求や売掛、入金、仕入、買掛、支払など販売管理機能も標準搭載しており、基幹システムとしての側面も持ち合わせています。
ものづくり企業の生産活動をより詳細に把握するために、近年ではPDMと生産管理システムを連携させる例が増えています。
生産管理システムは製造現場のデータ管理だけでなく、原価計算や在庫管理もできるなど基幹システムに近い機能を持ちます。一方でPDMは上流の設計工程でのデータ管理がメインの機能です。この両者を連携させることで、製品の設計から製造、品質管理まで連続するプロセスを一体化して管理でき、これにより、設計開発から生産開始までの納期短縮、生産効率の向上、品質向上、生産コストの削減などの業務効率化の効果が期待できます。
具体的に、生産管理システム「Factory-One 電脳工場」とPDM製品情報管理システム「Base-Right」の連携では、以下のような業務効率化のメリットがあります。
生産管理システムは従来手作業やエクセル管理になりがちだった生産プロセスにおける各種情報を一元管理でき、効率化や精度の向上といった効果があります。特に生産管理システムとPDMを連携させることによって、品名・メーカー名・型式・規格番号・部品登録コードといった設計部品表の登録作業の業務負荷を軽減できます。
両者を連携させるのであれば、「電脳工場」と「Base-Right」の組み合わせがオススメです。
電脳工場は製造業においては、高いシェアを誇るシステムです。通常は生産管理システムとPDMを別々に導入するため、制限ルールやデータの受け渡しに関する取り決めなどに時間やコストがかかってしまいます。
しかし、PDMのBase-Rightは電脳工場との連携モジュールを提供しており、上記の課題を解消できるだけでなく、高い動作の安定性を見込めます。
たとえば、電脳工場にて登録された製番の情報をBase-Right内に取り込む際、製番に対する部品情報も同時に連携できるようになるため、部品ごとのデータ反映が自動化できるでしょう。また、Base-Rightで作成した部品構成を、電脳工場のマスターテーブルに書き込むといった対応も可能です。
作業場の生産管理を効率化したいという企業は、PDMも合わせて導入することで大幅な業務効率化を実現できるため、ぜひご検討ください。