製造業では、CADによる設計データを元に、部品や構成、工程などの情報を管理するBOM(Bill Of Materials:部品表)を作成します。BOMは、設計、製造、品質保証、調達、保守などの各部門で、それぞれの目的に合わせて作成、管理されてきました。そのため、データを連携させて活用することが困難であり、非効率でミスも発生しやすい問題がありました。
各部門で作成されるBOMを一元管理するには、PDM(製品情報管理システム)の活用が有効です。CADとPDMが連携するシステムを構築することで、製品に関わるすべてのデータの流れが円滑になり、業務効率が改善されます。この記事では、BOMの種類や管理対象となるデータ、データ活用におけるPDMの役割、CADとPDMを連携させるシステムの構成例と特長などについて詳しく紹介します。
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BOMとは、製品を構成する部品や材料などを数量的にまとめた一覧表です。CADによる設計データを元に作られ、数量以外にも、加工工程や納入先などの情報も紐づけられています。BOMを作ることで、部品の数量不足や抜け、加工ミス、手配ミスなどを防ぐことができます。
BOMは作成部門、用途によって必要な情報が異なるため、CAD BOM、E-BOM、M-BOM、S-BOMなど、さまざまなものが作られます。
CAD BOMは、複数の部品で構成される3DCAD上のモデルの構成情報として作成されます。3Dモデルを作成する上での利便性を優先して構成されるものです。そのため、銘板や付属品のような、設計上検討不要な部品については省略されるケースもあります。
E-BOM(Engineering-BOM)は、設計/開発部門で作成、管理、運用されるBOMです。必要部品に加え、銘板や付属品など、製品を構成するすべての部品情報が含まれています。他製品へ流用しやすい単位(ユニットなど)を作り管理されることもあります。
M-BOM(Manufacturing-BOM)は、生産管理、生産技術部門で作成、管理、運用されるBOMです。製品を構成する部品以外に、工程や過程部品、治工具などの情報も付与され、調達、生産の計画の立案に活用されます。
S-BOM(Sales/ Service-BOM)は、営業部門、保守/サービス部門で作成、管理、運用されるBOMです。販売可能な組合せを考慮した販売単位の構成や、保守専用の組合せで管理されます。
この他にも、部門、用途に合わせて多くのxBOMが作成、管理、運用されています。
BOMはひとつの製品に対して、多くの情報が紐づけられるので、データ構造が複雑化しやすいのが特徴です。従来のように紙やExcelなどのソフトを用いた管理では、入力ミスや記入漏れが発生しやすく、関連した情報を一括して更新することも困難でした。この課題を解決するには、PDMとCADを連携させてBOMを一元管理することが必要です。全社的なデータの流れがスムーズになり、生産効率を向上させます。
PDMは、製品の設計データや関連する図面、仕様書などのファイルを中心に管理するシステムです。複数のBOMを一元管理できる強力なBOM管理機能を持っています。それにより、ひとつの製品に関わるデータやドキュメントの一括更新、参照、流用ができるようになり、部門間でのデータ共有も容易になります。
同様に、製品に関わるデータを管理するシステムとしてPLMもあります。PLMは、BOMの管理機能に加え、3DCADデータの管理に特化した機能を持っています。その他、プロジェクト管理、製造工程管理などの機能も備えているため、製品のアイデアや市場分析、製造、販売、保守管理など、製品が生まれてから廃止に至るまでの、製品のライフサイクル全体を管理できます。PLMを活用して製品のライフサイクル全体を管理することで、QCD(Quality:品質・Cost:コスト・Delivery:納期)の向上が可能です。
PDMもPLMも製品データの一元管理に役立ち、CADと連携させることで全社的なデータの流れを円滑にし、生産効率を向上させます。PLMは多くの機能を備えているため、PDMよりも導入、運用にかかる時間もコストも多くなる傾向にあります。必要な機能や人材、コスト等を検討して、自社の条件に合ったシステムを導入することが重要です。
CADで設計した情報を後工程のERP・生産管理に流していくシステム構成パターンは複数あります。活用シーンに応じてそれぞれメリット、デメリットがあり、自社の条件に合わせての選択が必要です。いくつか代表的なパターンを紹介します。
設計が2DCADのみであり、CADデータからE-BOM、M-BOM、その他各用途別BOM(xBOM)までを一貫してPDMで管理し、ERP・生産管理に渡す組み合わせです。たとえば、強力なBOM管理機能を持つ、NSWが提供するPDM製品情報管理システム「Base-Right」などを使用します。比較的低コストで導入が可能であり、各種BOMの管理を柔軟に行うことができます。アドオン、カスタマイズも容易です。デメリットとしては、PDMでは3DCADデータの管理が困難であり、3D管理を実施する際には、パターン5のように別途CADデータ管理システムが必要となります。
設計が2DCADのみであり、CADデータからE-BOM、M-BOMまでの管理をPLMで管理する組み合わせです。PLMには、たとえばフルWEBベースでクライアントへのインストールが不要なPLM製品ライフサイクル管理システム「Windchill」などを使用します。3D管理への拡張が可能であり、Webベースなので海外も含めた多拠点での利用ができます。デメリットとしては、2Dのみのままではオーバースペックになりやすく、コスト高になります。また、カスタマイズが限定的となり、運用をPLMに合わせる必要があります。
3DCADで設計を行い、CADデータからE-BOM、M-BOMまでの管理をPLMで管理する組み合わせです。PLMに「Windchill」を用いることで、3DCADデータからCAD BOM、E-BOM、M-BOMまでの連携が行え、ベストプラクティスに沿った業務標準化を実現できます。フルWebベースなのでインストール作業が不要であり、海外展開も容易です。多機能で周辺モジュール、ソリューションも豊富にあり、設計から製造、販売、廃棄まで幅広く情報を管理できます。ただし、導入にあたっては、パッケージに併せた特殊業務の運用見直しやPDMと比べるとコスト高になりやすい点などについては検討が必要です。
3DCADで設計を行い、CADデータの管理をCAD管理ツールで行い、E-BOM、M-BOM、xBOMの一連のBOM管理をPDMで行い、完成したx-BOMをERP・生産管理に受け渡す組み合わせです。CAD管理ツールが導入済であればそのまま活用できるので、低コストでE-BOMを含む各種BOMの管理が可能になります。デメリットとしては、CAD BOMと、E-BOM間の連携が弱く、複数のシステムを維持管理する必要があります。
3DCADで設計を行い、CADデータ、CAD BOM 、E-BOMの管理をPLMもしくはCAD/BOM管理ツールで行い、それ以降の各種xBOMの管理をPDMで行う組み合わせです。すでにPLMまたは、E-BOMまで管理が行えるCAD/BOM管理ツールが導入済みであり、M-BOM以降のxBOMの管理を柔軟に行う必要がある際に有効なシステム構成です。既存のPLMや管理ツールへのカスタマイズが最小限で導入できます。ERP(企業資源計画)システムとの接続のための、M-BOMや各種xBOMのカスタマイズが容易であり、柔軟性が高い点も特長です。たとえば、PDMとして「Base-Right」を用いる場合では、ユーザーライセンスフリーの為、ユーザー数を気にすることなく各用途別BOMをさまざまな部門からアクセスできる点が有効です。導入にあたっては、E-BOMとM-BOMをはじめとした各用途別BOMとの連携や、複数システムの維持管理方法などを検討する必要があります。
NSWが提供するPDM製品情報管理システム「Base-Right」は、軽量、柔軟で、小回りの利くソリューションです。技術情報のハブとなるシステムが構築できます。用途別のBOM定義はいくつでも追加可能であり、豊富な設定メニューと充実の標準機能、柔軟なカスタマイズ性により、お客様の運用、業務プロセスに合わせたシステム構築が可能です。ユーザーライセンスが不要であるため、設計部門のみならず製造部門や品質管理部門とのデータ共有が容易に行えます。コストパフォーマンスの高さから、輸送用機械器具、生産用機械器具、業務用機械器具をはじめとして、これまで18,000名以上の方にご利用いただいております。
PLM製品ライフサイクル管理システム「Windchill」は、世界中のベストプラクティスを反映した豊富な標準機能でFit to Standardを実現します。マルチCADデータ管理対応しているので、管理するCADシステムを選びません。フルWEBベースでクライアントへのインストールが不要なため、海外展開も容易に行えます。多機能で、周辺モジュール、ソリューションが豊富であり、M-BOM管理オプションも備えています。PLM製品ライフサイクル管理システム「Windchill」で、製品のライフサイクル全体を管理することでQCD向上をサポートします。
部門間連携や生産効率の向上を行うには、データの一元管理と連携を行い、有効活用していくことが必要です。近年は製造業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが強まり、デジタルツールを活用したデータ活用を積極的に行う企業が増加してきました。3DCADの導入も進み、PDM、PLMを導入して、設計の効率化や生産性向上を実現する例も増えています。
「Base-Right」、「Windchill」は、お客様の製造業DX推進を加速させる有力なソリューションです。導入を是非ご検討ください。NSWでは、現状の運用課題やご要件に併せたシステム導入をサポートし、お客様の課題を解決します。
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