モダナイゼーションとは?
リホストからリアーキテクチャまで主要手法を徹底解説

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企業の成長と競争力維持に不可欠な「モダナイゼーション」は、既存のレガシーシステムを単なる「移行」作業で終わらせるのではなく、最新技術やプラットフォームを活用してシステム全体を根本的に再設計・最適化する戦略的なアプローチです。

昨今、基幹業務システムやオフコンのサービス終了に起因する2027年問題や2031年問題など、外部環境の急激な変化が、従来型のシステム刷新の限界を浮き彫りにしています。こうした背景の中、モダナイゼーションは、DX推進、コスト削減、リスク低減といった多角的な効果を実現し、企業の中長期的な競争優位性を担保するための重要な施策として注目されています。

本記事では、モダナイゼーションの基本定義と背景、マイグレーションとの違い、主要手法の役割、そして成功事例を解説し、なぜ今企業にとってこのアプローチが必要不可欠なのかを明らかにします。

モダナイゼーションとは?マイグレーションとの違い

なぜ今、システム刷新・デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められるのか

1. モダナイゼーションとは?

モダナイゼーションとは、旧来のレガシーシステムを単なる新環境へ「移行」するだけではなく、最新技術やプラットフォーム(クラウド、AI、API連携等)を活用してシステム全体を根本的に再設計・最適化することで、持続可能かつ成長可能な情報システム基盤を構築するプロセスを指します。つまり、現行の業務要件や顧客のニーズに合わせて、システムの構造や機能を改善し、配置の変更や新機能の追加を行うことで、より効率的で柔軟な運用体制を実現する取り組みです。

2. モダナイゼーションが注目される背景

今日、企業は以下のような複合的課題に直面しています。


保守できる人材の減少

古い開発言語(例:COBOL)やプラットフォームで構築されたシステムでは、技術者の高齢化や退職、転職が進んでおり、専門の保守人材が不足しています。これにより、技術継承が困難となり、システムの持続的運用リスクが高まっています。


改修コストと期間の肥大化

レガシーシステムの改修プロジェクトは、数ヶ月から1年にも及ぶ大規模な取り組みのため、予算オーバーや想定外のリスクが常態化しています。結果として、事業のスピードが低下し、迅速な市場対応が困難となっています。


業務要件の変化と柔軟性の欠如

DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI導入、新サービス展開を進める中で、レガシーシステムのAPI連携の難易度やデータ活用の制約が、業務全体の効率や柔軟性を阻害しています。


レガシーシステムのサポート終了

2027年問題や2031年問題ともいわれる、基幹業務システムやオフコンを含む旧サービス終了に伴う課題が深刻化しており、現行システムの更新が急務となっています。これらの問題は、システムの老朽化や技術的制約を如実に示し、従来の刷新手法では対処が難しい状況を招いています。


これらの背景を踏まえると、単にシステムを新環境へ「移行」するだけではなく、最新技術や新たな設計思想によってシステム全体を再設計・最適化するモダナイゼーションが、持続可能なDX推進および中長期的な競争力強化に不可欠と言えます。

3. モダナイゼーションとマイグレーションの違い

マイグレーションは、既存のシステムやアプリケーションを現状の機能を維持したまま、新しい環境へ移行するプロセスです。一方で、モダナイゼーションはマイグレーションの概念を包みつつ、システム内部の構造や業務プロセス自体を改善・改革し、最新技術を積極的に取り入れて根本的な刷新を図る点にあります。

例えば、マイグレーションでは、オンプレミス環境からクラウドへの単純な移行が行われる一方で、モダナイゼーションではその過程で、システムコードの再整理(リファクタリング)や、基盤の更新(リプラットフォーム)、さらにはシステム全体の再設計(リアーキテクチャ)など、複数の手法を組み合わせることで、業務要件に合致したより効率的で柔軟なシステムへと作り変えます。

モダナイゼーション マイグレーション
定義 レガシーシステムを最新技術で再設計・最適化する 現状機能を維持した新環境への移行
目的 業務要件に合わせた柔軟で効率的な運用体制の構築 既存機能の迅速な新環境への移行
技術導入 最新のクラウド、AI、API連携など積極的に採用 必要最小限の変更に留める
業務プロセス 内部構造やプロセスの根本的改善、新機能の追加 現行の業務プロセスを維持
改善効果 長期的なDX推進や競争力向上に寄与 短期的な環境移行のみで根本的な改善は限定的

このように、マイグレーションは「移行」が主眼であるのに対し、モダナイゼーションはシステム全体を再構築し、業務効率や将来の拡張性を高めるための包括的な戦略とも言えます。

モダナイゼーションの主要手法とそのメリット

モダナイゼーションは、レガシーシステムを最新技術や新しい設計に基づいて刷新するための手法です。まずはリバースエンジニアリングにより現状のシステム構造や仕様を正確に把握し、その上で各アプローチ(リホスト、リファクタリング、リプラットフォーム、リアーキテクチャ、ERPリプレイス など)の中から最適な手法を組み合わせることで、DX推進、コスト削減、リスク低減といった効果を実現できます。ここでは、各手法の具体的な特徴と、それぞれのメリットを詳しく解説します。

0.リバースエンジニアリング(現状分析)

リバースエンジニアリングは、既存のシステムの不明瞭な構造や仕様、ソースコードや挙動を詳細に解析し、それらをもとに設計書や関連ドキュメントを作成する手法です。これにより、ブラックボックス化したシステムの全容が明確になり、その後の再設計・最適化・刷新といったシステム改善に役立てられます。


 メリット

正確な現状把握

システム内部の構造や仕様を明文化することで、改修や刷新に必要な内部構造と仕様を把握

知識の共有と継承

ドキュメント化により、将来的な運用・保守、改修をスムーズに進められる

1.リホスト(クラウド移行)

リホストは、従来の物理的なオンプレミス環境で稼働しているシステムの基本機能やコードを変更せず、そのままクラウド環境へ移行する手法です。既存のシステム資産を最大限に活用しながら、クラウドならではの弾力的なリソース管理や自動化ツールを取り入れることで、柔軟性、スケーラビリティ、セキュリティのメリットを享受します。また、最小限の改修で移行を実現できるため、ビジネスの継続性を確保しつつ、迅速なサービス展開が可能となります。


 メリット

スケーラビリティの向上

需要に応じたリソースの自動調整機能により、アクセス増加にもシステムが柔軟に対応

業務継続性の高い移行

業務中断のリスクを抑え、既存機能を維持しながら低リスクでクラウドシフト

2. リプラットフォーム(OS・DB更新)

リプラットフォームは、既存のアプリケーションの基本構造や機能を維持しながら、実行基盤となるオペレーティングシステムやデータベース、ミドルウェアなどのインフラ部分を更新する手法です。コード自体に大きな変更を加えることなく、ハードウェアとソフトウェアの両面を刷新することで、セキュリティ、パフォーマンス、および可用性の向上を図ります。他の手法と比べ、リプラットフォームはインフラに特化した部分更新により、低リスクかつ効率的にシステムの信頼性を向上させる点が特徴です。


 メリット

脆弱性や性能不足の解消

OSやDBの更新により、脆弱性や性能不足が解消され、安全かつ高速なデータ処理を実現

長期的なインフラサポート

サポートが継続するインフラへ移行することで、今後のインフラ保守・運用リスクが軽減

3. リファクタリング(コード整理)

リファクタリングは、システムの動作やビジネスロジックを変更することなく、既存のコードやアーキテクチャの内部構造を整理する手法です。冗長な処理の削除や部分なアルゴリズムの最適化などを通じて、コードの可読性・保守性・拡張性を向上させます。これにより、新たな機能追加や改修の際に柔軟かつ迅速に対応できる体制が整い、システムの長期運用がよりスムーズになります。他の手法が大規模な再構築を伴うのに対し、リファクタリングは「現状の機能を損なわずに」内部改善に注力する点が特徴です。


 メリット

コードの可読性・保守性向上

冗長なコードの整理と標準化により、保守時の迅速な修正が可能

アルゴリズムの最適化

不要な処理の排除によって、計算リソースの使用効率が向上し、レスポンス改善に寄与

4. リアーキテクチャ(マイクロサービス化等)

リアーキテクチャは、レガシーなシステム全体を再設計し、マイクロサービスなどの分散型の構造に転換する手法です。従来のシステム資産をなるべく活用しながらも、各機能を独立したサービスに分割することで、ビジネスの変化に迅速に対応可能な柔軟性と運用効率を実現します。リホストやリプラットフォームと違い、コードの再利用にとどまらず根幹レベルでの再構築を行うため、初期コストや工数は増大しますが、長期的な拡張性や耐障害性を大幅に向上できる点が大きな特徴です。


 メリット

変更影響範囲の限定

各機能を個別に切り出すことで、部分更新時の影響範囲を限定し、影響を局所化

並行運用による工期短縮

複数のチームによる同時並行での開発を可能とし、要求に応じた迅速な開発が可能

5. リプレイス(ERP刷新)

リプレイスは、既存のERPシステムを全面的に新しいシステムへ入れ替える手法です。業務プロセスの抜本的な再設計を伴い、企業全体の効率化や戦略変革を推進します。特に、ERPによって標準化された業務プロセスに自社業務を適合させるFit to Standardアプローチを採用することで、グローバルなベストプラクティスに沿った運用、拡張性、保守性が確保され、クラウドERPの継続的なアップデートによる柔軟な対応が可能になります。これにより、導入スピードの向上と将来の業務変革に対する安定した基盤が実現され、企業競争力を強化します。


 メリット

業務プロセスの最適化

標準化された業務フローにより、業務プロセスを効率化し、部門間の連携を強化

成長戦略への柔軟な対応

ベンダーが提供するアップデートを取り込み、市場環境の変化に即応する運用基盤を整備

6. リライト(0からの再構築)

リライトは、既存システムのコードやアーキテクチャに依存せず、システム全体をゼロから再設計・再開発する手法です。他の手法が既存資産の再利用や部分的な改修を前提とするのに対し、リライトは現行システムに蓄積された技術的負債や制約を完全に排除するアプローチです。最新の技術、設計思想、アーキテクチャを取り入れることで、業務要件に最適化された柔軟で拡張性の高いシステムを構築することが可能です。初期投資や開発工数、リスクは高いものの、長期的に見れば革新的なシステム運用と持続的な競争優位性を実現します。


 メリット

技術的負債の完全排除

既存の制約やコードを一掃し、将来的な拡張や変更が容易になる設計に刷新

要件に最適化した再設計

最新技術を活用したアーキテクチャを採用でき、業務要件に最適化した構築が可能


分類 メリット
リバースエンジニアリング 現状分析 ブラックボックス解消、内部構造の正確な把握、ドキュメント化による知識共有
リホスト クラウド移行 弾力的なスケーラビリティ、業務の中断リスクを抑えた継続性の高い移行
リプラットフォーム OS・DB更新 インフラ更新による脆弱性や性能不足の解消、長期運用による保守リスク軽減
リファクタリング コード整理 コード可読性・保守性向上、アルゴリズムゴリズム最適化によるパフォーマンス改善
リアーキテクチャ マイクロサービス化 各機能の独立による障害影響の局所化、並行開発可能な柔軟性
リプレイス ERP刷新 業務プロセスの最適化、ベンダーアップデートによる市場変化への柔軟な対応
リライト 0からの再構築 既存の技術的負債の完全排除、業務要件に最適化したシステム設計

本章では、モダナイゼーションを実現するための主要な手法とそれぞれのメリットを、リバースエンジニアリングによる現状分析を出発点とし、リホスト、リファクタリング、リプラットフォーム、リアーキテクチャ、リプレイス、リライトといった各アプローチを解説しました。これらの多様なアプローチを組み合わせることで、単なる移行作業ではなく、企業の現行業務や将来の成長戦略に合わせた効率的かつ柔軟なIT基盤の構築が可能です。次章では、具体的な導入事例を解説していきます。

モダナイゼーションがもたらす効果と成功事例

モダナイゼーションの取り組みにより、既存のレガシーシステムでの課題が解消され、業務効率化やコスト削減、リスク低減といった多方面の効果を期待できます。ここでは、実際の成功事例の概要をいくつかご紹介します。

リファクタリング : COBOL基幹システムのJava化

30年にわたって稼働していたCOBOLシステムを、Javaへ刷新することで、若手エンジニアが参入しやすくなり、保守人材不足や技術継承の課題が解消されました。その結果、開発効率が従来の3倍に向上し、機能追加や改修が迅速に実施可能となりました。

リホスト : オンプレミス運用からAWSへの移行

従来型のオンプレミス環境からクラウド環境への移行により、データセンターの維持管理費用が不要となり、運用コストが約40%削減されました。さらに、クラウドの多重冗長や自動バックアップ機能により、災害対策も強化され、事業継続計画(BCP)の信頼性が向上しています。

リアーキテクチャ : 生成AI活用のためのAPI化

基幹システムをAPI化することで、ChatGPTなどの生成AIツールとのシームレスな連携が実現し、業務の自動化が進み、従来の手作業中心の業務が大幅に効率化されました。これにより、業務全体の作業効率が著しく向上しています。



この章では、リファクタリング、リホスト、リアーキテクチャといった方法を通じたモダナイゼーションの効果について、簡潔に成功事例をご紹介しました。それぞれの事例が、従来のシステム刷新では解決困難だった課題に対して、戦略的なプロセスを通じた根本的な解決策を提供している点に注目できます。

モダナイゼーションは現状分析と手法の選定がポイント

本コラムでは、モダナイゼーションの定義、背景、主要手法、そして成功事例を通じ、システム刷新がもたらす効果とその必要性について解説してきました。しかし、企業ごとに抱える課題や業務プロセスは異なるため、一律のアプローチだけで解決できるものではありません。レガシーシステムが内包する根本的な問題を解決し、将来にわたる競争力を強化するためには、「現状分析」と「手法の選定」が極めて重要です。

まずはリバースエンジニアリングを通じた徹底的な現行システムの分析が不可欠となり、次に各手法の特徴とメリットを見極めた上で、最適な刷新手法を選定する流れが理想的なアプローチといえます。

現状分析

モダナイゼーションの第一歩として、リバースエンジニアリングにより現行システムのソースコード、システム構造、運用状況を詳細に解析し、正確な現状把握を行います。

  • 現在のIT資産やシステムの運用状況、課題を正確に把握する
  • 現行業務と将来の成長戦略に沿った課題抽出を通じ、刷新の対象を選定する

手法の選定

リバースエンジニアリングによる詳細な現状分析結果をもとに、以下の各種手法から貴社に最も適したアプローチを選定します。

  • 各手法の特徴とメリットを踏まえ、貴社に最適な手法を選定する
  • 将来のDX推進と継続的な成長を見据えた柔軟で効率的なシステム刷新を目指す

これらの「現状分析」と「手法の選定」を通じたアプローチにより、各企業固有の課題に対応した最適なモダナイゼーション戦略の策定が可能となります。モダナイゼーションの成果は、正確な現状分析と最適な手法選定から生まれます。貴社にあった刷新の一歩を、ぜひ今日から始めてください。

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